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東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)148号 判決

(争いのない事実)

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本件考案の要旨及び本件審決理由の要点が原告ら主張のとおりであることは、本件当事者間に争いがないところである。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 本件審決は、以下に説示するとおり、第一引用例には、本件考案の主要な構成要件である「前面フランジが窓なし透明であり、後面フランジ全体が単一色の着色不透明であるテープ用リール」が記載されているものと断ずることはできない旨誤認し、ひいて、本件考案は第一引用例に記載されたものと同一であると認めることはできないとの誤つた結論を導いたものであつて、違法として取り消されるべきである。

前示本件考案の要旨に成立に争いのない甲第二号証(登録実用新案審判請求公告公報)によれば、本件考案は、磁気テープ等用リールに関する考案であつて、従来、この種のリールには、フランジが両面共に透明なものやアルミ板等でフランジを作り、これに窓を設けたものがあり、また、単一色のリールや前面フランジが透明で後面フランジが無着色で無色又は白色とされ、リールのハブ前面に色識別部材、すなわち、リング状ラベル等の色識別リングを取り付けたリールがあつたが、フランジに窓のあるリールにはゴミが窓から侵入してドロツプアウト(信号再生低下)の原因となるという欠点があり、単一色のリールには電子計算機のデータ資料を色分けにより分類して保管することができないという欠点があり、また、右の色識別リングを取り付けたリールには色識別リングを取り付けることに伴う種々の欠点、具体的には、<1>リール(テープ)をコンテナに入れたときには、色識別リングの部分がコンテナロツク部分に隠れて外部からの識別が不可能となる、<2>リールの前方からの識別はできるが、後方からの識別は不可能であり、また、色識別リングの幅が狭いので、遠くからの識別は不可能である、<3>色識別リングは、リールが回転中にはがれるおそれがあり、はがれた後は全く色識別が不可能となる等の欠点があつたことから、本件考案は、これら従来のリールの欠点を排除することを目的とし、本件考案の要旨のとおりの構成を採用したものであること、本件考案の構成中、「後面フランジがテープ内容に応じてそれぞれ異色の窓なし着色不透明となされ……後面フランジがそれぞれに異色に着色コード化されていることによりテープ内容を分類可能とした……磁気テープ等用リール」とは、後面フランジ全体が単一色の着色不透明であり、かつ、その色がそれぞれのリールで異なつている複数の磁気テープ等用リールを組とする、という構成を意味するものであること、及び本件考案は、右構成を採用したことにより、他の構成と相まつて、従来の磁気テープ等用リールのもつ前記諸欠点を解消することができ、テープ操作中のテープの差込状態の確認をすることができるとともに、テープ使用量の増減監視を後面フランジの着色面積の変化で容易に行うことができ、かつ、後面フランジの着色をテープ内容に応じて異なる色とすることにより、色コード識別を行うことができる等所期の効果を奏し得たものと認められる。他方、第一引用例(甲第三号証の一ないし四)が本件考案の実用新案登録出願前に日本国内において頒布された刊行物であること、並びに、第一引用例に当時の日本電信電話公社の中央統計所長宮本氏とコンピユートロン社の販売、管理を担当していたオレアリー氏との「磁気テープの問題点を探る」と題する対談記事及びコンピユートロン社のCOMPUTAPEとLEXAN Reelsの写真入広告が掲載されていることは、被告の明らかに争わないところである。

ところで、本件審決は、第一引用例には、「前面フランジが窓なし透明であり、後面フランジ全体が単一色の着色不透明であるテープ用リール」が記載されているものと断定することはできない旨認定判断しているところ、原告らは右認定判断を争うので、この点について検討するに、成立に争いのない甲第三号証の一ないし四によれば、右対談記事の「リールの素材と構造」と題する欄には、宮本氏が、「私共の会社で、昨年六月から本年一月にかけてコンピユートロンを実際使用いたしましたので、……話を進めたいと思います。まず、……リール……について各々長所、短所を申し上げます。」と述べたうえで、コンピユートロン・テープリールの長所について、「コンピユートロン・テープのクール(これは、本件審決が指摘するとおり、「リール」の誤記と認める。)は透明で、テープの巻かれている状態がきちんと巻かれているか、折れ曲つていないか一目でわかり、……たいへんよいと思います。」と、また、その短所について、「透明であるのでクール(これも、同じく「リール」の誤記と認める。)のカラー・コントロールができない欠点もあるが、これに対してどのようにお考えですか。」と述べていることが、更に、「コンピユートロン・テープ・リールは窓がなく、操作上はテープを傷つけないのでたいへんよいと思いますが……窓がないと巻ける状態がよくないという人もあるのですが、この点いかがでしよう。」とも述べていることが認められ、一方、オレアリー氏は、宮本氏がコンピユートロン・テープリールの短所として指摘した右の点について、「リールの表面は透明になつているが、裏面はブルー、グレー、レツド、イエローetc.、いろいろのカラーがある。」と答えていることが、また、リールの窓の点については、「窓がなくてもなんら問題は起りません。」と答えていることが認められ、両者のこのような一連の発言の内容及び話題の流れと前認定説示した本件考案の従前技術、すなわち、リールのハブ前面にリング状ラベル等の色識別のリングを取り付けることによつてテープ内容の分類、識別が行われていたという事実を考慮すると、宮本氏の右発言中「リールのカラー・コントロール」とは、テープ用リールを複数色に色分けし、それを複数個用いることにより、テープの記録内容を分類、識別することを可能にするという技術を意味するものと解され、宮本氏もその趣旨で右用語を使用したものであることを理解するに十分であり、また、オレアリー氏の右発言中、リールの「表面」、「裏面」とは、リールの前面フランジ、後面フランジを意味するものと認められ、この点の宮本氏の発言をもつて、前面フランジが透明で、後面フランジが種々の色に着色されたリールにより、カラー・コントロールができない欠点がある旨述べたものとは到底解することができず、以上のことを総合すると、第一引用例には、宮本氏の使用経験に基づく発言に係る、前面フランジが透明で、前面及び後面フランジに窓がなく、かつ、カラー・コントロールができないという欠点を有するテープリールのほか、オレアリー氏の発言に係る、前面フランジが透明で、前面及び後面フランジに窓がなく、カラー・コントロールをなすために後面フランジを着色したテープリールの二つが開示されているものと認められる。そして、右のオレアリー氏の発言中には、右発言に係るリールの後面フランジの着色の態様について触れた発言がないことから、その態様としては、一応、後面フランジの一部又は全部が単一色に着色されている場合と複数色に着色されている場合とが想定されるものの、第一引用例記載の対談記事中には、右リールの後面フランジの着色の態様について、後面フランジの一部だけを単一色に着色したものであるとか、後面フランジの一部又は全部を複数色に着色したものであるとかいうような特殊な着色の態様を採用したものであることをうかがわせるに足りる発言や事情は全く認められず、また、カラー・コントロールするための手段として、後面フランジを着色したテープリールを用いる場合に、後面フランジの一部だけを単一の色に着色したテープリールを用い、あるいはフランジの一部又は全部を複数色に着色したテープリールを用いることにフランジ全体を単一色に着色したテープリールを用いるのとは異なつた格別の技術的な意味が存するものとは認められず、叙上の事実をふまえて前記オレアリー氏の発言をみると、右発言に係るコンピユートロン・テープリールの後面フランジは、フランジ全体が単一色に着色されているものと解するのが相当である。なお、前掲甲第三号証の二によれば、第一引用例には、前記のオレアリー氏の「リールの表面は透明になつているが、裏面は……いろいろのカラーがある。」旨の発言に続いて、宮本氏が、「裏面のカラーは、そのテープが稼働しているときに、なんら意味をなさないように思いますが……」と質問していること、及びオレアリー氏が右質問に応じて、更に、「そのためには裏面に付けるカラー・マークも用意されているし、また、最新のサターン・リングでは、表面にカラー・リングが付けられるようにしてあります。」と述べていることが認められるが、右の宮本氏の質問は、コンピユートロン・テープリールには、カラー・コントロールを可能とするために後面フランジを種々の色に着色したリールがある旨のオレアリー氏の前記応答を受けて、そのようなテープリールを宮本氏なりに想定してなされた質問であつて、右質問に至るまでの話題の流れやその内容、更には、右質問がテープの稼動状態に限定してなされていることから、その質問の趣旨は、リールにテープが相当量捲回された状態でコンピユーターに装着されて稼動している状況においては、後面フランジは捲回されたテープによつて見通しが遮蔽されることから、このような場合には、後面フランジが着色されていても、テープのカラー・コントロールに役立たないのではないかという疑問を述べた点にあるものと解するのが相当であり、また、オレアリー氏の前記応答も、このような場合に、リールに捲回されたテープの内容の識別を更に容易にするための方策(手段)として、その前面に付ける(右オレアリー氏の発言中「裏面」とは「表面」の誤りと認められる。)カラー・マーク等も用意してある旨述べたものと解するのが相当であるから、両者の右発言は、オレアリー氏の発言に係る前認定のコンピユートロン・テープリールの後面フランジ全体が単一色に着色されていることと何ら矛盾するものではなく、前認定判断を左右するに足りる発言と解することはできない。そして、前示のオレアリー氏の「リールの表面は透明になつているが、裏面は……いろいろのカラーがある。」との発言においては、前面フランジが透明であることと後面フランジが着色されていることを対置しており、しかも、前掲甲第三号証の一ないし四を精査するも、第一引用例には、オレアリー氏の発言に係るテープリールの後面フランジが着色透明のものであることをうかがわせるに足りる事情は認められないから、右フランジは着色されることにより不透明になつているものと推認するのが自然であつて、このことは、前掲甲第三号証の三によれば、第一引用例記載のコンピユートロン社のCOMPUTAPEとLEXAN Reelsの写真入広告には、女性が右手の親指をハブの輪の中に入れ、小指と薬指でリールの外周部を支えてLEXAN Reelsをもつている姿が写されているところ、右写真において、捲回されたテープによつて遮蔽されていない部分の背後にあるリールをもつ女性の右手や衣服が透けて見えておらず、右リールの後面フランジは不透明であると認められることからも首肯し得るところである。また、前面フランジが透明で、後面フランジが不透明であれば、内部の捲回されたテープを見透かすことができ、かつ、テープの捲込、捲ほぐれに応じて後面フランジの見透せる着色面積部分が変化することにより、捲回されたテープ量を判別することができることは当然のことであるから、このような構成は前示オレアリー氏の発言に係るテープリールも当然に具備しているものと認められ、更に、カラー・コントロールの手段として後面フランジが種々の色に着色された複数のリールが存するということは、それらを組として用いることにより、テープ内容の分類及び識別に利用し得るということであつて、前示オレアリー氏の発言に係るテープリールにもこのような要件は開示されているものと認められる。

叙上の事実を総合すると、第一引用例には、前面フランジが窓なし透明とされ、内部に捲回されたテープを見透すことができ、後面フランジが窓なしでそれぞれ異色に着色コード化されていることにより、テープ内容を分類可能とした、複数の磁気テープ用リールを組とした磁気テープ用リールが開示されているものと認められる。被告は、第一引用例には本件考案の構成要件は開示されていないとして(一)ないし(五)の理由を挙げ、(一)において、引用例記載のテープリールは、両面フランジとも透明なリールで、テープの捲かれている状態が分かるようなものである旨主張するが、前認定説示のとおり、第一引用例記載の対談記事には、宮本氏の使用経験に基づく発言に係る前面フランジが透明で、前面フランジ及び後面フランジに窓のないテープリールのほか、オレアリー氏の発言に係る前認定のテープリールが開示されているのであつて、被告の右主張は、失当である。なお、被告は、原告らの主張に対する反論において、第一引用例掲載の写真入広告の写真に示されたリールの全面フランジが全体にわたつて透明でないとか、透明フランジであつても、光線の関係によつては不透明に写る場合があるとか、後の女性の小指と薬指の一部が後面フランジを透かして見えるとか、あるいは、無着色では白色のフランジの場合には、写真では不透明に見える旨主張するが、右リールの前面フランジの外周から内周へ向かつて半分程の部分とそれからハブにかけての部分とで、その透明度に差があることは認められるものの、前面フランジの全体が透明であることに変わりはないから、その余の主張は何ら意味のある主張と解することはできず、また、白色も「着色」の一種というべきであるから、被告の主張は、いずれも採用することはできない。また、被告は、(二)において、第一引用例記載の対談記事における宮本氏の「使用されるテープの長さがメジヤーによつてわかる」との発言をとらえて、コンピユートロン・テープリールには、本件考案におけるようなリールの後面フランジの着色面積の変化によつてテープの捲回量を読み取るという発想はない旨、また、第一引用例記載の対談においては、「カラー」と「テープ量の判別」とが全く無関係の事項として扱われている旨主張するが、着色面積の変化によつて捲回量を読み取るといつても、極めて大雑把な読取りしかできないことは容易に理解し得るところであり、その程度のことは自明のことといえるから、この点に何ら触れる発言がないからといつて、前認定のオレアリー氏の発言に係るテープリールにこの点の発想がないと断ずることはできないし、後面フランジの着色とテープ量の判別とが無関係の事項として取り扱われているとしても、このことが右リールの後面フランジの全体が単一色に着色されていることを否定する事情とはなり得ないことは明らかであるから、被告の右主張は、いずれも失当である。更に、被告は、(三)において、オレアリー氏は権威者として紹介されており、その用いる用語は厳密に解釈すべきであるとしたうえで、オレアリー氏の「リールの表面は透明になつているが、裏面は……いろいろのカラーがある。」旨の発言からは、種々の解釈が可能であるとして、種々のリールを図示するところ、被告の図示するようなリールは、技術的には製作不能ではないとしても、右のオレアリー氏の発言は、それまでの対談の内容や対談の流れに則して解釈すべきであつて、右の観点をふまえてオレアリー氏の右の発言をみれば、前認定説示のとおり、後面フランジ全体が単一色に着色されたテープリールが開示されているものと認められるのであつて、この点を無視して、右の発言だけを他と切り離して取り上げて云々する被告の主張は、到底採用することができない。また、被告は、裏面のカラーは、前後の発言からみて着色透明であると想像され、本件考案における着色不透明の技術的思想はないだけでなく、第一引用例には、そのカラーが色識別リングの色を指すのか、それともフランジのごく一部の色を指すのかといつた具体的な記載も全く見当たらない旨主張するが、前示のとおり、オレアリー氏の発言に係るリールの後面フランジは、全面が単一色に着色されている不透明のものであると理解するのが自然であつて、しかも、オレアリー氏は、後面フランジの着色について語つており、裏面フランジにつける色識別リングについては何ら語つていないのであるから、被告の右主張は、失当である。更に、被告は、(四)において、第一引用例記載の対談記事における宮本氏の発言中の「窓なし」という表現は明確ではなく、「リールが窓なし」であるという場合の「窓なし」の語句は、必ずしも「フランジに窓がない」という意味ではなく、「前面フランジと後面フランジの間の空間のリールの円周部分の開口部が塞がれたもの」と解釈されても不思議はない旨主張するが、第一引用例記載の対談記事において、前認定のとおり、宮本氏は、「コンピユートロン・テープリールは窓がなく、操作上はテープを傷つけない」旨、また、オレアリー氏は、「窓がなくても何ら問題は起りません。」と述べており、この両名が話題としている「窓」はフランジ部分に設けられる「窓」であつて、円周部分開口部などに「窓」があるかどうか等を問題にしているわけではない。なお、被告は、第一引用例掲載の写真入広告の写真に関して、右写真には、リールを支える人物の右手の親指の下方に丸く窓のようなものが見えるとも主張するが、右の丸い窓のようなものは、テープのたるみを取つたりするために、指を当ててリールを回すためのフインガー・ホールであつて、前後面フランジを貫通する窓とは認められないから、被告の右主張は、いずれも採用することができない。また、更に、被告は、(五)において、「裏面のカラーは、そのテープが稼動しているときに、なんら意味をなさないように思いますが……」という宮本氏の発言をとらえて、この「カラー」はテープが稼動中透明な前面フランジを見透かして判別できないか、全く見えない「カラー」と考える以外にないから、リールの前方から見えない面又は後面側からしか分からないものをいう旨、また、宮本氏の右の発言に対するオレアリー氏の、そのためにはカラー・マーク等も用意されている旨の応答をとらえて、コンピユートロン・テープリールには、後面フランジの着色部分によつて稼動中のテープ内容の判別とテープ量判別に役立てようとする技術的思想は全く存しなかつたことが証明される旨主張するが、右の宮本氏の発言は、前認定説示のとおり、自らの使用経験に基づく発言ではなく、オレアリー氏の発言に係る後面フランジが着色されたテープリールを想定して発せられた疑問であつて、テープリールにテープが相当量捲回された状態でコンピユータに装着されて稼動している状況においては、後面フランジが着色されていてもテープリールのカラー・コントロールに役立たないのではないかという疑問を述べたにすぎないものと解するのが相当であつて、オレアリー氏の発言も、このような場合に備えて、テープ内容の識別を容易にするための手段としてカラー・マーク等も用意してある旨述べたにすぎないものと解されるのであるから、両者の前記発言をもつて被告のように解釈することは、その発言の趣旨を誤解するものであつて、失当である。被告は、原告らの主張に対する反論として、テープが最大限捲かれた状態にあつても、フランジの最外周部分との間の非捲回部分を残す巻取り余裕(Eバリユー)が国際規格(ISO)及びJIS規格により定められているから、全面フランジが透明で不透明な後面フランジ全体が着色されたテープリールであれば、テープが稼動前であつても、稼動中であつても、また、テープをどの方向からみても後面フランジが一見して判明できるはずである旨主張するところ、成立に争いのない甲第一一号証及び第一二号証によれば、国際規格(ISO)及びJIS規格により定められている最小のEバリユーは、三・二mmであることが認められるが、右のEバリユーの大きさからは、リールにテープが一杯に捲回されている状態でテープが稼動している場合であつても、何らの補助手段なしに、一見して前面フランジの着色が明確に識別できるものと直ちに断ずることはできないから、被告の右主張はにわかに採用することはできない。また、オレアリー氏の発言に関連して、被告は、第一引用例記載のテープリールには、後面フランジの着色部分をテープ稼動中のテープ量判別に役立てようとする技術的思想はなく、このことは、全面フランジの透明が一部阻害されることとなるカラー・マークを表面フランジに付けるということからも裏付けられる旨、更には、オレアリー氏の前記発言は、コンピユートロン・テープリールはカラー・マークやサターン・リングの助けを借りなければ、テープ稼動中にテープ内容の判別ができないという事実をより明確に認めるものである旨るる主張するが、前認定説示のとおり、前面フランジが透明であり、かつ、後面フランジが着色された構成を備えたリールであれば、当然にテープの捲回量を読み取り得るという効果を奏するものであつて、しかも、その効果も、さほど意味のあるほどのものと解することはできず、しかも、オレアリー氏の発言にあるカラー・マーク等は、後面フランジの着色によるカラー・コントロールを補助するためのカラー・マーク等であることは、その話しの流れや内容から明らかであり、その目的を達するためには、表面のごく一部を遮蔽するにすぎないラベルのようなカラー・マークを用いれば足りることは自明であるから、このようなものを付したからといつて、後面フランジの着色によつてテープ量の判別及びテープ内容の識別をする妨げにならないことは明らかであつて、カラー・マークを付するということをもつて、後面フランジの着色によりテープ量の判別をするという技術的思想及び後面フランジでカラーコード化するという技術的思想がなかつたことを裏付けることにはならないし、右カラー・マーク等が補助的な識別手段であることは前認定説示のとおりであつて、被告の前記主張は、いずれも採用することができない。また、被告は、乙第三号証、第五号証の一ないし三及び第七号証ないし第九号証を挙示して、プラスチツクを原料として、例えば、食器、容器等を多色成形する技術は、現に昭和四〇年以前に存在し、普及されていたから、一個の着色リールを作るために部分的な着色成形又は複数色の着色成形をすることは技術的に可能であつたことは明白であり、このことからも、当時後面フランジの一部着色されたリールが存在したことが考えられる旨主張するところ、成立に争いのない前掲乙号各証によれば、本件考案の実用新案登録出願当時、プラスチツクの成形技術の分野において、二色ないしそれ以上の多色の成形物の成形方法が開発されていたことが認められるから、前記対談がなされた当時、フランジの一部又は全部を複数色に、また、フランジの一部のみを単一色に着色したテープリールを作ることが不可能であつたと断ずることはできないが、右技術が当時既にテープリールの製造に利用されていたと認めしめるに足りる証拠はなく、また、前掲甲第三号証の一ないし四(第一引用例)を精査するも、第一引用例記載のオレアリー氏の発言に係るテープリールが右方法等により成形されたものであることをうかがわせる事情は何ら認められないから、右事実をもつてしても、リールの後面フランジの全体が単一色に着色されているとの前認定を左右することはできず、他に被告の右主張を認めしめるに足りる証拠はない。

そうであるとすれば、本件考案は、第一引用例に記載されたものと同一ということができ、したがつて、本件考案は第一引用例に記載されたものと同一であるとは認められないとした本件審決は、その認定判断を誤つたものというべきである。

(結語)

三 よつて、本件審決を違法としてその取消しを求める原告らの本訴請求は、その余の点について判断をするまでもなく理由があるから認容することとする。

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